2011年09月22日
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三百字小説『「肩が凝る鹿」島』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 協同経営者のN氏は無人島を所有していて、毎年夏休みはそこにこもる。名前は、コルシカ島だという。だが、あの地中海の大きな島をか!?

 しかし、よく聞くと肩が凝る鹿がいるという『凝る鹿島』であった。

 さて、今年も夏休みが来た。コルシカ島に行く、と言い残してN氏は消えた。しかし、確認を要する案件があって、私はN氏を探して無人島に向かった。

 だが、そこにN氏はいなかった。いたのは、肩が凝る鹿だけだった。鹿は答えた。「島のオーナーなら今頃コルシカ島ですよ。ここにはいません」

 「馬鹿な。ここが『凝る鹿島』だろ?」

 「はいその通りです。でも、今年は本物のコルシカ島を見ておきたいと地中海旅行に行ってしまわれました」

(遠野秋彦・作 ©2011 TOHNO, Akihiko)

遠野秋彦